自宅で仕事をしているクリエイターの場合、家賃や光熱費を経費にできるのか、疑問に思ったことはありませんか?
結論からお伝えすると、自宅の家賃や光熱費は、事業のために必要な部分に関しては経費に計上できます。
ただし、事業に使われた部分の金額は、根拠のある計算方法で算出しなければなりません。
この記事では、自宅で仕事をする場合の家賃や光熱費の計算方法、注意点などについてお伝えしています。経費について悩んでいる方は、ぜひ読んでくださいね。
目次
家賃や光熱費は「家事按分」で経費にできる
家賃や光熱費などの、プライベートと事業の両方に関わりがある出費を、家事関連費と言います。家事関連費のうち、事業に使った部分の金額を「家事按分」という方法で算出すれば、経費に計上できます。
家事按分とは、自宅を事業として使っている割合から経費を算出するものです。この割合は法律で決まっているわけではないので、「合理的な割合」を自分で決定しなければなりません。
例えば、広さの割合で考えるなら「事業スペースは自宅の面積の3分の1」、時間の割合で考えるなら「1か月のうち仕事をするのは176時間だから24%」などとなります。
家事按分の計算方法について、このあと具体的にお伝えします。
家事按分の計算方法【家賃編】
家賃を家事按分するさい、どのように計算すればいいか見ていきましょう。
家賃の家事按分は、以下の2つ、どちらかを基準にします。
- 仕事場スペースの広さ
- 仕事をしている時間
それぞれ、例を出してお伝えします。
仕事場スペースの広さ
自宅の専有面積のうち、どれだけのスペースを仕事場としているかで考えます。
仕事をしている時間
仕事をしている時間の割合で家事按分を出すことも可能です。
1か月のうち、仕事をしているのが22日間で、1日あたり8時間だとします。
すると、1か月に仕事をしている合計時間は176時間ということです。
(22日 ✕ 8時間 = 176時間)
また、1か月の総時間は720時間です。
(24時間 ✕ 30日間 = 720時間)
このことから、1か月のうち、仕事をしている時間は24%ということになります。
(176時間 ÷ 720時間 = 0.24… → 24%)
家賃が月額6万円の場合、24%にあたる1万4千400円を経費に計上できます。
家事按分の計算方法【光熱費編】
続いて光熱費の家事按分を計算する方法を見ていきましょう。
電気と、水道・ガスの場合に分けてお伝えします。
電気
電気の家事按分は、計算方法が2つあります。
- 仕事をしている時間
- コンセントの数
仕事をしている時間で家事按分を求める方法は、家賃と同じです。ここでは、コンセントの数で家事按分を求める方法をお伝えします。
まず、自宅のコンセントが全部でいくつになるか確認しましょう。
全部で15個あり、そのうちの4個を仕事で使ったとします。すると、割合は26%ということになります。
(4個 ÷ 15個 = 0.26… → 26%)
電気料金が1万円の請求だった場合、2千600円が経費に計上できる金額です。
(1万円 ✕ 26% = 2千600円)
水道・ガス
料理のコンテンツを制作しているなどの理由で、水道やガスの利用が事業に関係する場合には家事按分が認められます。
水道、ガスについても、利用した時間の割合で家事按分を求めるようにしましょう。
自宅と別に事務所を借りている場合
仕事のために事務所を借りているけれど、自宅でも仕事をする時間がある、という場合はどうすればいいのでしょうか?
家賃と光熱費、それぞれについて家事按分や経費の考え方をお伝えします。
家賃
事務所の家賃は家事関連費ではなく、全て事業に関わるものですので、全額を経費に計上できます。
自宅の家賃については、家事按分をしましょう。自宅で仕事をしている時間がどのくらいになるかを計算します。
月に5日、2時間は自宅で仕事をする時間があるとすると、次のような計算になります。
(1か月のうち自宅で仕事をする時間)
2時間 ✕ 5日 = 10時間
(1か月のうち自宅で仕事をする時間の割合)
10時間 ÷ 720時間 = 0.01… →1%
(家事按分で経費に計上できる金額)
自宅の家賃6万円 ✕ 1% = 600円
事務所の家賃が10万円だとすると、自宅の家事按分と合計して10万600円を経費に計上できます。
事務所の家賃10万円 + 自宅家賃の家事按分600円 =10万600円
光熱費
光熱費も、家賃と同様の考え方になります。
事務所で発生した光熱費は全額を経費にします。自宅で発生した光熱費の家事按分は、自宅で仕事をした時間をベースに算出しましょう。
家賃や光熱費を家事按分するときの注意点
家賃や光熱費を家事按分する上では、さまざまな注意点もあるので確認しておきましょう。
抑えておきたいのは、次の4点です。
- 計算方法(合理的な割合)は毎年、継続して同じ割合を使用
- 根拠ある理論で家事按分を決めなければならない
- 生計をともにする家族や親族に払う家賃は経費にできない
- 青色申告・白色申告の家事按分には要件の違いがある
それぞれについて、詳しくお伝えします。
計算方法は途中で変更できない
家事按分の計算方法は途中で変更できません。
最初に決めたものが適用され続けることになるので、安易に決めないようにしましょう。
根拠ある理論で家事按分を決めなければならない
経費で重要なことは、事業のために必須な支出であることを税務署に対して明確に説明できることです。家事按分に関しても、割合の根拠となる部分を説明できなければなりません。
極端な話ですが、経費に多く計上したいからと家事按分を90%に設定すると、筋が通らなくなってしまいます。
生計を共にする家族や親族に払う家賃は経費にできない
家族が所有する物件に住み、さらに仕事をするスペースがある場合、家族に対して支払った家賃は家事按分できるでしょうか。
生計を共にする家族が所有している物件の場合は、認められません。
これは、家族へ支払った家賃は家族の所得にならないから、というのが理由です。
家事按分できる経費
家事按分ができる経費は、家賃と光熱費の他にもあります。
主なものは、次の2つです。
- 通信費
- 自動車関連費
それぞれについて、解説します。
通信費
通信費では、以下の項目を家事按分できます。
- インターネット利用料
- 通話料
クリエイターの方ですと、インターネットを使用する機会が多いでしょう。しかし、プライベートと事業で使ったインターネットの費用を分けるのは難しいため、家事按分を用います。
通話料の家事按分については、通話履歴や、どのくらいの割合で仕事の電話をしているか、などで家事按分を計算しましょう。
自動車関連費
納品や出張など、事業で自家用車を使っている場合には、以下の項目を家事按分できます。
- 自動車の購入費用
- 駐車場代
- ガソリン代
- 車両保険料
- 自動車税
- 車検費用
自動車関連費は事業に使った時間や日数、走行距離などを基準に計算します。
まとめ:家事按分は明確な根拠を示せるようにしよう
自宅で仕事をしている場合の、家賃と光熱費の家事按分についてお伝えしてきました。
家事按分は経費の一部ですから、節税に関わる大事な部分です。もれなく計上できるようにしましょう。
家事按分は、根拠が明確であることが重要です。税務署から指摘が入ったとしても、すぐに説明できる理論で算出しましょう。
専有面積が20㎥で、そのうち仕事をしているスペースは5㎡だとすると、自宅における仕事場の割合は25%です。
(5㎡ ÷ 20 ㎡ = 0.25 = 25%)
家賃が月額6万円だとすると、このうちの25%である1万5千円を家事按分として経費に計上できます。
(6万円 ✕ 25% = 1万5千円)