個人事業主_の経費どこまで落とせる?クリエイターと経費

個人事業主になると、事業にかかった支出(経費)を全て自分で管理しなければ なりません。

そこで気になるのが、以下のことではないでしょうか。

  • どこまでを経費で落とせる?
  • 光熱費など、プライベートと分けにくい経費はどうすればいい?
  • 経費を多めに計上したらどうなる?

特にクリエイターの方は、仕事上でもプライベートでもつき合いがある仕事仲間がいたり、仕事内容と趣味が似通っていたりと、プライベートとの線引が難しい職業です。

こういった疑問を解決するには、経費の考え方や家事按分、税のペナルティなどについて知っておく必要があります。

この記事では、個人事業主の経費について詳しく説明し、経費のさまざまな疑問にお答えしていきます。ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

 【個人事業主】経費の考え方や判断基準

経費とは、事業を行う上で必要な費用のことです。

個人事業主は、確定申告で所得の申告を行います。このとき、売上から経費や控除を引いた部分が所得となり、課税の対象になるため、経費をもれなく計上しておくことが節税につながるのです。

だからといって、なんでも経費にしてしまえばいいという考えは間違いです。とくにクリエイターは、事業とプライベートの支出が曖昧になりやすいので、注意しなければなりません。

ここからは、経費についての考え方や、経費になるかどうかの判断基準について詳しくお伝えしていきます。

事業に必要な経費かどうか

経費になるかどうかは、「事業に必要な経費なのか」「売上につながる経費なのか」というところを基準に考えましょう。税務署から「事業との関連性の証明」を求められたさい、客観的に説明できるかどうか、といった視点も大切です。

とくに接待交際費(会食の費用)は、税務署から指摘が入りやすい項目です。「誰と会食したのか」「会食にはどのような必要性があったのか」などを、しっかりと説明できるようにしましょう。

 個人事業主のプライベートな出費でないか

個人事業主が経費を管理する上で気をつけたいのは、プライベートの出費との線引きをしっかりとしておくことです。例えば、出張先で事業に関係のない個人的な観光をしたら、その費用はプライベートな出費にしなければなりません。

自宅の一部を仕事場としている場合などは、光熱費やインターネット料金など、「家事按分」を用いて、全体の何割を事業用の支出とするかを定めておきます。家事按分については、詳しく後述します。

経費に上限はないが、常識の範囲内におさめる

経費に上限はありません。ただし、常識の範囲内におさめておかないと、税務署からの指摘が入りやすくなります。

例えば、下記のような行為は経費として認められない可能性が高いです。

  • 売上に対して接待の費用が多い
  • 出張のさいにスイートルームに泊まった

事業との関連性、目的、頻度、金額が重要になりますので、覚えておきましょう。

経費の計上のために必要なもの

経費として計上するためには、レシートや領収書を保管しなければならない、ということをご存知の方は多いでしょう。ただ、領収書だと記載すべき項目も指定されているので、あわせて確認が必要です。

また、レシートや領収書が発行されない出費でも、出金伝票などの支払いを証明できるものが残されていれば、問題ありません。

ここでは、次の2つについて、詳しくお伝えします。

  • 領収書に必要な記載項目
  • 領収書やレシートがない場合の対応

領収書に必要な記載項目

領収書については、以下の項目について記載があるかを確認しましょう。

  • 宛名(支払った人の名前や屋号)
  • 支払い金額
  • 但し書き(具体的な支出内容)
  • 発行者の名前や会社名、所在地
  • 支払った日付

さらに、支出の用途について自分でもメモをしておくと、記帳するさいにすぐ内容を思い出せるのでおすすめです。

なお、レシートがあれば改めて領収書を発行してもらう必要はありません。

レシートや領収書がない場合の対応

バスや電車の乗車料金、慶弔費など、レシートや領収書が発行されない経費もあります。このような出費の場合は、以下の表のように対応しましょう。

出費の種類 対応方法
バス代・電車代
  1. 出金伝票を切る
  2. 利用履歴を印字
慶弔費
  1. 出金伝票を切る
  2. 案内状や祝儀袋や不祝儀袋の表書きをコピーする
懇親会の割り勘費用 出金伝票を切る
クレジットカードでの支払い クレジットカードの明細書を控える
振込での支払い
  • ATMの振込明細書を控える
  • 通帳の記録のコピーをとる

現金での支払いで明細が残らないものは、出金伝票にプラスして、証拠となる資料を残しておけば安心です。

経費は勘定科目を使って計上する

経費を記帳するさいは、「勘定科目」を用いて計上します。よく使われるものは、以下のとおりです。

勘定科目 経費の内容
水道光熱費 水道、電気、ガスなどの光熱費
通信費 電話代、インターネット料金、切手の購入費
旅費交通費 打ち合わせ、納品、出張などにかかった宿泊費
電車・バス・タクシーなどの交通費
接待交際費 取引先との接待の飲食費用
お中元・お歳暮
会議費 打ち合わせ時の飲食費用
修繕費 店舗、オフィス、自動車、器具などの修理代
新聞図書費 新聞、雑誌、書籍、メールマガジンなどの購読費
消耗品費 文房具、事業用の家具、パソコンなどの備品
*取得価額が10万円未満または法定耐用年数が1年未満のもの
広告宣伝費 広告掲載にかかった費用
ポスターやカタログの印刷代
求人広告費、ポスティング費用 Webサイト制作料
荷造運賃 運送料、梱包資材
外注工賃 業務委託したデザイン料
事務所の清掃費
営業の代行費用
研修費 セミナーの参加費
支払手数料 銀行の振込手数料
その他手数料
地代家賃 家賃、月極駐車場の費用
損害保険料 店舗や事務所の火災保険料
自動車保険料
租税公課 消費税、固定資産税、印紙税など
雑費 引っ越し代、クリーニング代、ごみ処理費など、他に勘定科目がないもの

飲食代については、1人あたり5,000円以上なら交際接待費、5,000円以下なら会議費、という考え方を基準にするといいでしょう。

10万円以上の備品は減価償却を行う

パソコンや車など、10万円以上になる備品は「固定資産」の扱いになり、他の経費とは違う方法で計上しなければなりません。

固定資産は、法律で定められた耐用年数によって「減価償却」を行います。数年にわたり分割して経費に計上していく方法で、1年に全ての額を計上することはできないので、注意してください。

経費の家事按分とは

クリエイターは、自宅で仕事をしていたり、事業でもプライベートでも使う備品があったりしますね。

これらは、プライベートで使った部分と事業で使った部分を明確に分けるのが困難です。

  • 自宅と事務所を共用している場合の家賃や光熱費、インターネット使用料
  • プライベートでも事業でも使う車のガソリン代や携帯電話使用料 など

こういった費用は、「家事按分」を用いて計上します。

家事按分とは、全体の支出に対し、事業で使う部分の割合をあらかじめ決めておくものです。この割合は、合理的に説明できるよう、根拠がある決め方をしなければなりません。

例えば、賃貸している自宅の一部を事業のスペースにしている場合は、使用面積や業務時間から家事按分の割合を決めておきます。

使用面積 事業として使っている書斎部分の割合を求める
書斎の床面積 ÷ 自宅全体の床面積
業務時間 1か月のうち何日の稼働日があり、1日のうち何時間を業務にあてているのかを求める
例)1か月のうち20日稼働していて、業務時間は1日のうち6時間
1か月の業務時間 ÷ 1か月の総時間(720時間)

家賃料が10万円で、家事按分が15%なら、次のように計算します。

10万円 × 15% = 1万5千円

この1万5千円が、経費として計上できる部分です。家事按分の割合は途中で変更できないため、注意してください。

また、持ち家の一部で事業を行っている場合、以下の費用も家事按分ができます。

  • 減価償却費
  • 住宅ローンの利息
  • 固定資産税
  • 火災保険料

ただし、家事按分が2分の1を超えると住宅ローン控除の適用がされなくなってしまいます。

経費にできるもの、できないものの具体例

事業に関連する支出のみが経費として計上できる、ということをお伝えしました。しかし、実際には経費にしてもいいのか、プライベートの出費とすべきなのか、迷ってしまうケースが多いものです。

そこでここでは、クリエイターの方が迷いがちな、経費にできるもの、できないものの具体例を挙げていきます。参考にしてみてください。

経費にできるもの

  • カフェでパソコン作業をしたさいの飲食費
  • スキルアップのために購入した書籍代

これらは経費にできる出費です。業務上の理由があって発生したものであれば、経費になると考えましょう。

経費にできないもの

  • 家族の都合を優先にする旅行
  • プライベートでも使える衣服代
  • 化粧品、エステなどの美容代

半分、取材を兼ねた旅行だとしても、家族旅行を兼ねているような場合は、経費に認められない可能性が高いです。家族の都合を優先する部分が多いためです。

また衣服については、事業でしか使わない制服や舞台衣装であれば経費になりますが、日用品として販売されているような衣服は、経費にならないと考えましょう。

美容代についても、クリエイターでは経費になりません。モデルや芸能人であれば経費として認められますが、クリエイターでは事業との関連性を証明するのが難しいからです。

青色申告にすると家族への給与も経費にできる

生計を同一にする家族へ給与を支払う場合は、さまざまな制約はあるものの、経費として計上できます。家族への給与を経費にするためには、3つの条件をクリアしなければなりません。

  • 確定申告を青色申告で行う申請をしている
  • 「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出している
  • 給与を支払う相手が1年の半分以上、事業の手伝いをしている

これは、家族に給与を支払ったことにして、経費をかさ増しすることを防ぐのが目的です。

また、青色事業専従者になった人は、控除対象配偶者や扶養親族の適用を受けられなくなりますので、覚えておきましょう。

青色申告では、他にも次のようなメリットがあります。

  • 控除の上限額が増える
  • 赤字を繰越できる など

このため、経費以外の部分でも節税効果が大きいのです。

経費の不正計上にはペナルティがある

節税のためにと、経費の不正計上を行ってしまうとペナルティがあるため注意してください。

  • 架空の経費を計上する
  • 領収書の偽造 など

上記のような行為は、脱税とみなされ「重加算税」が課されます。重加算税は、ペナルティの中でも1番重い加算税です。ごまかしたり隠したりしようとするのは、やめましょう。

まとめ

個人事業主になって経費を管理する上では「とりあえず何でも経費にしてしまおう」という考え方は、捨てましょう。経費に計上する前に、税務署にきちんと説明ができる支出なのか、と自問自答してみてください。

節税する方法は、経費を計上することだけではありません。青色申告にすると節税の部分でメリットが大きいので、白色申告のままだという人は、青色申告への切り替えを検討するのもおすすめです。

経費や節税について、正しい知識を身に着けていきましょう。

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