資本主義の不平等、不条理さをアートに昇華させるクリエイターナガサカマゴ

No_01|ナガサカマゴ

概要

アパレル企業経営から倒産・路上アーティストへ

ガーナのスラム街が一大転機に

アートが持続可能な資本主義を実現する

「芸術は爆発だ」との声が聞こえる

資本主義を否定せず活用する

ゴミから富を創造したクリエイター

お金配りおじさんこと前澤友作氏が、2019年1月に実施したお年玉企画「お金贈り」に手を上げた人物に興味を抱いた。「世界を幸せにしたいアーティストの皆さまへ」とのタイトルを目にし、なぜ、アートなのか、なぜ、世界が幸せになるのかと。

 手を上げた人物は、美術家・長坂真護氏。彼は何者なのだろうか?

アパレル企業経営から倒産・路上アーティストへ

 MAGO CREATION株式会社 代表取締役美術家・長坂真護氏は1984年生まれ。ホストクラブで働いて得た資金を基に、アパレルの企業を設立するも外部スタッフに騙されるなどして倒産。2009年から路上アーティストとして世界を放浪する。

 アーティストが会社経営なんてするから倒産なんて憂き目にあうんだとの声も聞こえてきそうだが、この倒産の経験が資本主義・民主主義の巨大な歪みへの気づきになったのではなったのではないだろうか。

 路上アーティストとしての作品は、戦争反対を掲げるなど現代社会を反映したもので、自身のクリスマス作品が12月25日を過ぎると廃棄物として処理されてしまったことから消費についても考えるようになる。

 自分自身が精魂込めて作った作品が、翌日にはゴミになるなんて、さぞ悔しい想いに見舞われただろうと想像する。アートとは何なんだろうか、ものづくりとは何なんだろうか、自分自身の存在価値はあるのか、もしかしたらそこまで考えてしまったかもしれない。

ガーナのスラム街が一大転機に

 雑誌『Forbes』で見たゴミの山でゴミを持つ少女の写真がきっかけとなり「世界最大級の電子機器の墓場」と言われるガーナのスラム街「アグボグブロシー」を訪れる。

 先進国から捨てられた電子廃棄物を焼き、金属を取り出す。日当5ドルの仕事は、排出される毒ガスで若くして病気になり、最悪の場合死に至る。先進国から遠く離れた場所では、そんな割に合わない仕事が当たり前のように行われている。

 消費について考えていた長坂氏が、目の前に広がる光景を見て、彼らを救いたいと思うようになるのも自然な流れだったのかもしれない。時に、人は何かに導かれるような出会いがあると言うが、長坂氏にとってガーナはそんな土地だったのだろう。

 アグボグブロシーに捨てられていたゴミで作ったアートは、展示会で1500万円の値をつける。これを機に、長坂氏はガスマスクの配布、無料の学校の開校など現地への恩返しを始める。

 人に騙され会社を潰し、貧しい路上アーティストとして作った作品が、廃棄物として扱われる。そんな経験をしていながら、得た収益を独占せずに現地の人たちに還元する。現代にこんな人がいるのかと感嘆せずにいられない。

アートが持続可能な資本主義を実現する

 ここ数年で「SDGs」という言葉をよく耳にするようになった。Sustainable Development Goalsの略で、持続可能な開発目標と言うらしい。先進国で叫ばれる「持続可能」という言葉に、ガーナのスラム街「アグボグブロシー」の人たちはどのような気持ちになるのだろうか?

 長坂氏は「資本主義という、民主主義かつ、競争原理主義ど真ん中の日本の社会」と日本を表現している。巨大な歪みを生み出し、大量消費社会の闇をガーナに押し付けている先進国が、持続可能を叫んだところで説得力はあるのだろうか。

 長坂氏はその解決策のひとつがアートであり、クリエイティビティだと示してくれているのではないかと思う。結果や効率を重視した人にとってのゴミは、感性を刺激するアートとして生まれ変わる。資本主義に欠けていたパーツを埋めるかのように。

「芸術は爆発だ」との声が聞こえる

 長坂氏の活動を追っていて、ふと「芸術は爆発だ」との声が聞こえてきた。昭和を代表する芸術家・岡本太郎だ。彼は、権威主義的な日本美術界に宣戦布告し、出版や講演などの啓蒙活動も積極的に行った。大阪万博で披露された「太陽の塔」は技術と産業の進歩を真っ向から否定した作品だ。

 技術と産業の進歩が人類を幸せにするという万博のメッセージを否定した岡本太郎氏と、資本主義の歪みをアートで解決しようとする長坂氏に似たものを感じるのは私だけではないだろう。

 長坂氏はアーティストを「ARTISTとはHEARTをEARTHに残せる人」と定義している。太陽の塔を通じて、HEARTをEARTHに残した岡本太郎は、まさにARTISTと言えるだろう。

資本主義を否定せず活用する

 時にアーティストやクリエイターは、経済から目を背けていると感じる事がある。長坂氏の活動を見ていると、それではいけないのだと感じさせる。経済から目を背けると、資本主義の歪みに飲み込まれてしまい、自分らしい活動ができなくなるのではないだろうか。

 長坂氏は、世界を幸せにするにはお金が必要だと言う。原価がなく100万円あれば沢山の可能性を世の中に発表できるのだと。稼ぎまくって次の世代へ贈って欲しいと。私は、これぞ持続可能な姿だと思う。

 資本主義から目を背けてはいけない。お金稼ぎから目を背けてはいけない。堂々とアートで事業を成功させ、富を手に入れようじゃないか。高級ブランドの服を買うのもいい、高級車を乗り回すのもいい。だけど、そんなベタな資本主義の成功者のような使い方じゃなく、富を無償で手放していこうじゃないか。

ゴミから富を創造したクリエイター

 英語・クリエイトの意味は「創造する」である。長坂氏は、ゴミから富を創造したクリエイターであり、経営者として会社を倒産させてから、復活を遂げてきた人生のクリエイターであるとも言えるだろう。さらに、現在の資本主義を否定するわけではなく、持続可能な新しい資本主義を創造しようとしている。

 アートに携わるだけがクリエイターではない。人生や社会に関わり、未来を創造することをクリエイターと呼ぶのであれば、全ての人がクリエイターであるべきかもしれない。どんな人生を、どんな社会を創造したいか、自分に問いかけてみるのもいいだろう。長坂氏がクリエイトしてきたように。

 もし、長坂氏が自分のためだけに創造していたら、ガーナに行くこともなかったかもしれない。前澤氏に出会い”お金贈り”を実行することもなかっただろう。長坂氏は「志」という表現を使っている。

まとめ

「兎追ひし彼の山」で始まる童謡『ふるさと』は3番で「志を果たして いつの日にか帰らん 山は青き故郷 水は清き故郷」と唄われる。志を果たして富を得、山や水に還元しようという意味ではないだろうか。

 ナガサカマゴのクリエイターとしての在り方、お金との向き合い方から、自分自身、クリエイターとしてどう在りたいか考えてみるのも良いだろう。

貴方は、どんな志をクリエイトしますか?

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