お金と恋愛は似ている? どちらの「不安」も手放すことに決めたヘア&メイクアップアーティストの話
Interviewee
吉田佳奈子
Profile
学生時代よりヘアメイク業界に興味を持ち、大学生活の傍ら沢田哲哉氏に師事、(有)沢田哲哉 MAKE UPに所属。撮影現場の技術を学ぶ。その後、2004年よりヘア&メイクアップアーティスト として活動をスタート。約20年間、雑誌・広告・CM等、さまざまな分野で活躍中。
【Instagram】https://www.instagram.com/canayoshida/
インタビュアー/吉村知子
構成・文/羽田朋美(Neem Tree)
撮影/矢部ひとみ
今回のゲストは、ヘア&メイクアップアーティストとして活躍する吉田佳奈子さんです。
大学卒業後から雑誌や広告で活躍するモデルやタレント、俳優など出演者のメイクアップやヘアセットを 行うこの仕事に就いて約20年間、美容のプロとして第一線で活躍していますが、お金の管理については、ちょっぴり自信がないと言います。
40代独身女性ならではのお金の悩みについても、語っていただきました。
敏腕ヘア&メイクアップアーティスのお金の価値観
税理士・吉村知子(以下、吉村)
メイクアップアーティスト、かっこいいお仕事ですね。どのようなところに仕事の魅力を感じますか。
吉田佳奈子さん(以下、佳奈子さん)
いろいろな方に出会えることですね。
小さなお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、世代や性別、職業、国籍を問わず関わらせていただけるので、メイク中にはいろいろお話ができることがとても楽しいです。
吉村
メイク1つで顔の印象はグッと変わりますよね。さらに顔だけでなく、気分まで変わってきます。
佳奈子さん
おっしゃる通りで、気持ちにも作用するので、メイクのパワーって本当にすごいなと感じます。
ちょっとメイクを施すだけで高揚感に包まれたり、元気が出たりして、想像以上によろこんでいただけたことは何度もありますね。
吉村
素敵ですね。ヘアメイクさんといえばクリエイティブなお仕事の代表格でもありますが、実は職人っぽさもあるのかなと感じます。
佳奈子さん
そうですね。トレンドを前面に押し出したり、エッジの効いた独特なメイクを施したりするときにはクリエイティブな面が際立ちますが、良くも悪くもライン1本で大きく変わるので、そういった細かな調整の部分は、職人寄りなのかもしれません。
吉村
そんな素晴らしい技術をお持ちの佳奈子さんに、お金の価値観についてお聞きしたいと思います。
佳奈子さん
お金の価値観! 先行して質問リストをいただいたのでずっと考えていたのですが、絞り出してようやく出てきたのは、“借りたら返す”とか、“貸したお金は戻ってこないと思え”とか、そういうの しか出てこなくて。(一同爆笑)
あとは、払った後に後悔しない使い方をしようとは思っていますけれど……それぐらいですかね(笑)。
貯蓄を意識し始めたのは30代後半から
吉村
大学時代からお仕事を始めていらっしゃるから、お金を管理し始めたのも早かったんですね。
佳奈子さん
はい、管理自体は早かったのですが、貯めることを意識し始めたのは遅かったです。
そもそも「貯金しよう」と考えたことがあまりなくて、入ったら使っちゃうほうでした。
でも、借金はしたことはないので偉いと思っているんですけれど(笑)。
吉村
貯蓄しようと思ったきっかけは?
佳奈子さん
30代後半のときに経営コンサルタントの女性のヘアメイクをさせていただいたことがあって。
対談のお仕事だったのですが、会話の中で「資産運用しないことはリスクしかない」というワードが出てきて、ドキッとしたことがきっかけです。
実は以前に証券口座は開設していて、わけもわからないまま投資をしたことはあったんです。でもそれも元本割れしてしまって。その後は放置していました。
吉村
そこから意識が変わって、貯蓄に目覚めたのでしょうか。
佳奈子さん
そうですね。ただ、月々の収入は一定ではないので、貯蓄額の割り振りに悩みます。
収入が多い月には多めに貯蓄し、そうでないときは少なくしているんですけれど、そもそもそんなやり方でよいものかどうか。
本当は、貯蓄額は決めた方がよいのでしょうか。
吉村
そうですね。年間の貯蓄額を決めるのことをおすすめします。
収入が少ない月は減額してもいいけれど、多い月はバンバン貯蓄するとか。
年間の目標額に達成するように、月ごとに調整していくことをおすすめします。
佳奈子さん
なるほど、目標額ですか。やっぱり、なりゆきじゃダメなんですね。
吉村
あとは、自動送金の仕組みを作ってしまうことが大切ですね。
私は目的別口座を作れる住信SBI ネット銀行を使ってます。自動振替機能付きで、例えば「旅行用」「投資用」「緊急予備資金用」 というように、目的別の講座が10個作れるんですよ。
手元になければ使わないので、そうやって最初にお金をロックしてしまうのはひとつの手です。
佳奈子さん
それは便利ですねー。ちょっと調べてみます。
ちなみに、収入の何%を貯蓄する……というのは、 決めたほうがよいのでしょうか。
吉村
そうですね。決めたらいいと思います。老後の生活でいくら必要なのかということも考えながら決めるといいですね。
佳奈子さん
老後の生活……急にしょんぼり(笑)。やっぱり、老後まで視野に入れるべきなんですね。
今、 最もお金を使っているのが交際費です。
ファッションは好きですけれど、いいものを長く着る派で、多くは使っていないつもりです。
旅行も好きで、定期的に旅に出ます。どこを削ればいいですか。
吉村
物質的なことよりも、経験にお金を使うことが好きなんですね。
ご自身の価値観のもとでお金を使っていて、とてもいいと思います。
削るというよりも、やはり先取り貯蓄にして、予算内でやりくりするという考え方にシフトしていけるとよいと思います。
経済的に自立する最大のメリットは“らしく”いられること
吉村
自分の名前で仕事をして、経済的にも自立されていて、とても理想的なライフスタイルを実現しているように感じます。
佳奈子さん
ありがたいことだと思います。ただ、私は独身なので、結婚してパートナーがいる人はどうなのかな、と気になります。
二馬力の人は、その分貯蓄にまわしたりしているのかなぁって。
私自身は、パートナーに払ってもらいたいとか、そういう気持ちはないんですけれど、単純に一緒に暮らしている人たちはどうなんだろうということはずっと感じていました。
吉村
確かに、ふたり暮らしであれば、生活費の負担は減りますよね。
今、パートナーに払ってもらおうという気持ちはないとおっしゃいましたけれど、素敵な価値観ですね。
やはり早いうちから独り立ちして生きてきたからなのでしょうか。
佳奈子さん
そうだと思います。でも、周りの人から損しているよね、と言われることもあります(笑)。
吉村
逆に、自立して生きることのメリットはなんでしょう。損だけじゃないですよね。
佳奈子さん
やっぱり、“らしく”いられることでしょうか。
吉村
“らしく”いられる! すごくいいですね。自分でやりたいことを選択できるのって、最高ですよ ね。自立していなければ、できないことですしね。
佳奈子さん
確かに。自分で選択できますね、やりたいことも、欲しいものも。
今まであまり意識したことはなかったけれど、それってすごく素敵なことなんだなぁと感じました。
お金は人生を豊かにするツールであり、 自在に変化するもの
吉村
佳奈子さんにとって、お金とはなんでしょう。
佳奈子さん
私にとってお金とは、人生を豊かにするツールの1つですね。
しかもそれは、自由自在に変化するもの。
あるときは飛行機のチケット代になって、私はいろんな経験ができたりするわけですが、 別の場所では、紙切れ同然で、まったく価値のないものになることもある。
そんな、とても不思 議なものだと思います。だからこそ、お金そのものに価値を見出すのではなく、お金を使った先 で何を得られるのかを大事にしていきたいですね。
吉村
素敵な考え方ですね。佳奈子さんは、人生を豊かにするためにお金を使いたい方なんだということが伝わります。
佳奈子さん
人生を豊かにするお金の使い方をするためにも、お金について意識することが大事だということを今回のインタビューの中で改めて感じました。
吉村
意識することははすごく大事ですね!
さらに、“これだけの収入が欲しい”と初期設定することで、目標の達成度も変わってきますし。
“これ以上は稼げない”と思うと、本当に入ってこないんですよ。
逆に、お客さんを見ていて、私からすると難しい目標値だなと思っても、ご本人がその数字を掲げて邁進すると、不思議と達成できたりもして。
佳奈子さん
やっぱり、精神的なものってありますよね。「仕事くるかな」とか「お金がなくならないかな」 とか、不安に思っていたらダメなんでしょうね。
吉村
そうなんです! 不安はない方がいい。お金と恋愛は似ています。
不安に思うと、そこに縛られて 身動きが取れにくくなってしまいます。
だから、「こうする!」と決めたら、お金の心配はしないことが大切です。
佳奈子さん
すごく響くなぁ~。お金も恋愛も、不安な気持ちを手放すように心がけます。
吉村
最後にもう1つ質問させてください。
このギャラリーは、SOCIAL GOOD GALLERYという名称でして、社会をよりよくしたいと願うクリエイターの創作活動と経済活動のフェアな循環を後押ししたいというコンセプトのもとに運営しています。
佳奈子さんにとってソーシャルグッドな活動とは、どんなことでしょうか。
佳奈子さん
最近は、売り上げの一部から寄付される商品やサービスが増えていますよね。
そういったところを見つけたら、積極的に利用するよう心がけています。
吉村
日頃の消費活動の中で寄付付きの商品を選んでいるのですね。
食品やコスメ、アクセサリーなど、 さまざまな業種で取り組みがなされていますよね。とても素晴らしいと思います。
楽しくインタビューさせていただきました。
佳奈子さんとは同学年だということもわかり、親近感でいっぱいです!
またお話できたらうれしいです。本日は、ありがとうございました。
“正解のない”クリエイティブなことと、それを支える“正解がある”お金のこと。
クリエイターが豊かな生活を送るには、どちらも大事な要素です。そこで、「お金との関係」について、現役で活躍するクリエイターのみなさんにインタビュー。
日常のお金との向き合い方や価値観をはじめ、創作活動を続けるためのお金の考え方について幅広くお聞きします。