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しんかわまさみ

クリエイターとお金

No_4

“お金がなくても大丈夫”だったイラストレーターがお金について真剣に考えてみた

Interviewee
しんかわまさみ

Profile

イラストレーター

1975年福岡生まれ。1998年よりフリーのイラストレーターとして活動開始。2001年に上京。
広告や雑誌のイラストのほか、2006年に第一子出産以降は子ども向けのワークショップを開始。最近はライバーの仕事にも興味津々。
【Instagram】shinkawamasami

インタビュアー/吉村知子

構成・文/羽田朋美(Neem Tree)  撮影/矢部ひとみ

“正解のない”クリエイティブなことと、それを支える“正解がある”お金のこと。

クリエイターが豊かな生活を送るには、どちらも大事な要素です。そこで、「お金との関係」について、現役で活躍するクリエイターのみなさんにインタビュー。

日常のお金との向き合い方や価値観をはじめ、創作活動を続けるためのお金の考え方について幅広くお聞きします。

底抜けの明るさと、生まれ持ったハッピーオーラで惹きつける。今回のゲスト、イラストレーターのしんかわまさみさんは、そんな形容がふさわしい人です。

これまでの人生では、たとえ潤沢にお金がないときでも、不安や焦燥感に苛まれたり、まして不幸を感じたりしたことは一度もなかったのだそう。

お金に惑わされない強さをうらやましく感じますが、今はお金に対して、新たな思いをめぐらせているのだとか。ざっくばらんにお話しいただきました。

“お金がなくても大丈夫”というマインドは、一体どこから?

税理士・吉村知子(以下、吉村)

イラストレーターのお仕事を始めたのはいつ頃でしょうか。

しんかわまさみさん(以下、まみさん)

地元の福岡で暮らしていた22、3の頃です。

小さいときから絵を描くのがすごく好きでした。でも、当時はイラストレーターになる方法がわからなくって。美術の短大に行って、そこからデザイン事務所に入ったんですけれど、絶対にデザインじゃないなと思ってしまい……1ヵ月くらいで辞めました。

その後、当時カットモデルをしていた美容室で広告のモデルをさせていただいたときに知り合った方にイラストを見てもらったんです。

すると「こんな感じの絵が使いやすいよ」って、教えてくれて。広告として使えるイラストのアイデアを一気に吸収させてもらえました。

吉村

そこからどんどんお仕事をいただけるとようになったんですね。

まみさん

ありがたいことに。イラストが大好きだから、お金よりも何よりも、この仕事ができてうれしい!って気持ちで描いていましたね。

そこから東京に出るまでの3年間は、本当にたくさんの仕事をさせてもらいました。

好きなことでお金を稼げたという成功体験は自信にはなったのですが、もともとのマインドが“お金はなくても大丈夫”。長年、その感覚が根底にありました。

ところがこの歳になってからの気づきで、またちょっと考えが変わってきました。

吉村

お金の価値観の変化については後ほどくわしくお聞きしたいのですが、“お金はなくても大丈夫”というマインドは、どこから来ているのでしょうか。

まみさん

ひとつに、お金がどうこうということよりも、自分が好きなことや楽しめることに没頭するよろこびを知っていたというのはあるかもしれません。

高校のときはストリートカルチャー、短大のときは音楽に夢中でした。

お金はなかったけれど、必死にバイトして、福岡から飛行機で東京・渋谷のOrgan Barや、INKSTICKに行ったり、無我夢中でレコードやCDを集めたりしていましたね。

強い情熱があると、お金がなくてもなんとかするし、好きなものにまっすぐだと、小さな心配事は打ち消されてしまうんだと思います。

吉村

すごいパワー!

まみさん

もう、無双状態ですよね(笑)。そういう生き方をしてきたけれど、年齢を重ねきた中でフェーズが変わってきて、人生で初めて悩んでいます。

吉村

悩んでいますか? 見るからにエネルギーが溢れていますけれど(笑)。

お金の使い方が変わっている?両親のお金の使い方が、生き方の土台

吉村

子どもの頃の環境って、今のお金の価値観にも影響していることが多々あると思うのですが、印象に残っているエピソードはありますか。

まみさん

おもしろいのが、経営者なのに、わが家はお金を使うところと使わないところが極端なんです(笑)。

感覚の共有を大事にしていて、食事とか旅行にはバンバンお金を使うのですが、そうでないところは、びっくりするくらい堅実で。

飲食店のほかに洋服屋さんもやっていましたが、服はあまり買ってもらった記憶がないなぁ(笑)。それなのに、小学生のときに突然HANAE MORIの全身コーデやイヴ・サンローランのセットアップを渡されたりする謎(笑)!

でも、子どもの頃に着たいのは、ハイブランドの服じゃない。そんなこともあって、中学生の頃から自分で古着屋さんを回って、かわいい服を必死で探していました。それが今の感覚につながっているのかもしれません。

一度、家業の業績が悪化して生活が一転したことがありましたが、それまでも物質的な贅沢はしてこなかったから、私にとっては、特に変化はありませんでした。

両親は苦労したと思いますが、私は1ミリも嫌なことはなくって。もしかしたらつらかったかもしれないけど、記憶には残っていないんです。楽しい思い出しかない。

後になって両親から、大変なときにも元気よく友達を連れてきてくれてありがとうって言われました(笑)。

その後、両親は事業を立て直したのですが、傍らで見ていてもそのパワーはすごかったですね。そのガッツには心から尊敬します。

吉村

持っているエピソードも、スケールが違いますね。

お金をかけずにおしゃれを楽しんできたことも、“お金はなくても大丈夫”という価値観につながっているのかもしれませんね。お金が潤沢になくても、アイデアと感性でプラスに転じることができる。この成功体験は、大きいですよね。

まみさん

そうですね。わが家の変わったお金の使い方や堅実さも受け継いでいて、子どもの頃から緊急予備資金じゃないですけれど、必ず自分で決めた一定額が、手元に残るようにコントロールしていました。

好きなものはバーンと買うけれど、まったくのゼロになるのはイヤなんです。

どう稼いでどう生きていくかを真剣に考える段階に

吉村

それでは、そろそろお悩みについてお聞かせいただけますか?

まみさん

はい。最近、年齢に伴って体力的にキツいと感じることも増え、これからどう稼いでどう生きていくかを考え直しているところです。

これまでは、私の最も得意な分野は明るく楽しく生きられることだったのですが、これからは家族が必要なときにポンとお金を出したり、効率的にできることはお金で解決したり、自分のためにも家族のためにもなるお金の使い方をしたり……

そうやって生きていきたいと思ったら、しっかりお金を稼がなきゃって気持ちが強くなってきました。

吉村

将来のことを考えて漠然としたお金の不安を持つ方は多いですね。

年齢とか体力的なことのほかに、何かきっかけとなる出来事があったのでしょうか。

まみさん

これまではどんなことがあってもずっとハッピーだったのですが、ここ数年ちょっと乗り越えなきゃいけないようなことが起こったり、自分が変わりたいなと思うようなことが起こったりしていて。

いずれにしても、自分に気づきが必要な時期だからこそ、起こっていることだと思ってはいるのですが。

多くの人が「まみの底抜けの明るさを見ると元気になる」と言うのも頷ける、この笑顔

吉村

本当に望む生き方を実現するために、“お金はなくても大丈夫”というマインドから一歩前進したわけですね。

まみさん

多分。そうかもしれません。

やみくもに贅沢をしたいわけではなくて、理想の自分を生きるため、自分にとって穏やかな、今日も気持ちいいって思える生活をするためにお金が欲しいです。

最近、お金を得るということは、イコール自分の生かし方なんだなって感じています。だから私も、自分を生かして生きることでお金を得たいと思っています。

吉村

いいですね。“お金が欲しい”ってスイッチが入ったから、これから先は全然違ってくると思いますよ。

最後に、まみさんのソーシャルグッドな活動について教えてください。

まみさん

水筒を持ち歩くとかゴミ減らすとか、冷房一度上げるとか、なるべく電気は消そうとか……そういうことは習慣にしています。

それと、周りの人たちから「まみの底抜けの明るさを見ると元気になる」って言ってもらえることがあって。そういうときは、ちょっと貢献できているのかなって思います(爆笑)。

吉村

存在そのものがソーシャルグッド!

素晴らしいですね。自分を生かしながらお金を得て、ますます理想の暮らしを実現してください。まみさん、今日はありがとうございました。

まみさんの作品。今回の撮影場所となったグリーン溢れるNeem Tree Studioをイメージして描かれた作品