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すまあみ
SUMAAMI

クリエイターとお金

No_2

お金に無頓着な生き方を変えたクリエイターの最高なお金の使い方

Interviewee
すまあみ

Profile

壁画ペインター/アート講師 17歳で渡米。

ニューヨークで美大を卒業した後、20代はファッションライターとして活躍。

2007 年に壁画ペインターへ転身。

個人宅の子ども部屋やキッズ向けのショップ、ショールーム、ナーセリースクール、幼稚園などへの壁画制作を多数手がける。

2010年、建築家の夫とともに拠点を ニューヨークから東京に移す。現在は壁画制作のほか、クリエイティブな習い事事業ASOMANABO (アソマナボ)など、アートプログラムの講師も務める。中学生の女の子のママ。

 

インタビュアー・吉村 知子  取材・文/羽田朋美(Neem Tree)   撮影/矢部ひとみ

“正解のない”クリエイティブなことと、それを支える“正解がある”お金のこと。クリエイターが豊かな生活を送るには、どちらも大事な要素です。

そこで、「お金との関係」について、現役で活躍するクリエイターのみなさんにインタビュー。

日常のお金との向き合い方や価値観をはじめ、 創作活動を続けるためのお金の考え方について幅広くお聞きします。 

今回のゲスト、すまあみさんは壁画ペインターとして、東京を拠点に子ども部屋、企業、保育施設、百貨店、ファッションストアなどの壁画制作を手がけています。

10代の多感な時代を含む17年間をニューヨークで過ごしたあみさんの、言動に包み隠しのない姿と底抜けの明るさは、彼女に関わる多くの人びとを魅了します。

そんなあみさんが、お金について赤裸々に語ってくれました。終始笑いでいっぱいだったインタビューを、ぜひご覧ください。

夢の実現を現実的に考え始めたら、家計の現状を直視せざるを得なくなった

税理士・吉村知子(以下、吉村)

早速ですが、お金について、今思うことをお聞かせください。

すまあみさん(以下、あみさん)

お金には、本当に無頓着に生きてきました。

夫婦揃って子どもっぽいから、いつか手に入るだろうと思ってあまり気にせずに生きてきたというか。“宵越しの銭は持たない”を地で行っていて、もう、本当にお金ないのに旅行とか行っていましたね。今使いたいんだもん!って。

吉村

それがここ数年、変わってきたんですね。

あみさん

そうなんです。2年くらい前から、いつか田舎に住みたいねと夫婦で話すようになりました。

夫は建築家で、おたがいにものをつくる仕事をしていることもあって、家そのものも庭も内装も、本当にすべて自分たちで一からつくるという夢を持つようになったんです。

新型コロナのときなんて、“もう、やっちゃう?”なんて話まで出たんですけれど、それを本当に実現したかったら、今ほど綱渡りの財政のままじゃできないと気づかされました。

だから、計画的に貯めなきゃいけないよねっていう話になって、お金の計算が上手な友達にまず何をしたらいいか聞いたら「マネフォワードをとりあえず入れて」と教えてくれました。そこで生まれて初めて家計簿をつけるところにやっと立ったおばさんです(笑)

吉村

(笑)マネーフォーワード、いいですね。私も使っています。使いやすいですよね。

あみさん

使いやすいです!初めて家計が可視化されて、お金の流れがわかりました。

吉村

お金の流れを把握して、何に最もハッとしましたか?

あみさん

食費ですね。食材費もですし、外食費も。

もうみんな、そんなやさしい目で見ないで(笑)!

ファッションもハイブランドが好きとか、ハイソな暮らしに憧れているとかはまったくないのですが、古着が好きで買ったり、週末どこか遠出して安い家を借りたりとちょこちょこやっていた
ら、そりゃあ貯まらないよね!っていう使い方でした。

でも、家計の流れがわかったら、意識が変わりました。ちゃんと向き合おうって。それで投資信託も始めました。

吉村

いいですね!

お仕事風景。ダイナミックな作品に圧巻!

パートナーとのマネー会議で二人三脚の家計管理をめざす

背景の壁画はあみさんの作品

あみさん

これからはパートナーと二人三脚で家計管理していきたいのですが、どうやったらお金への関心
の薄い夫をその気にさせることができるのでしょうか?

事業に関しても、夫は仕事は楽しさややりたいこを最優先する人。これだけの売上げが欲しいとか、お金のことはまったく考えないんです。だから仕事量と収入が見合っていないことは日常茶飯事。

なんなら、よりよい材料をそろえたいからと持ち出しが多くなり、赤字になっていることもあります。夫は生活費の引き落としの日もわかっていなくて、娘の学費の引き落としの直前に慌てたこともありました。
アーティストとして夫を見ると、すごく才能があって、仕事にかける情熱もあって、そういうところは認めているし好きだけど、生活者としての部分はもう、本当になんていうか……。

吉村

クリエイターの方には少なくありませんね。

あみさん

でも、本当にまずいと思って、月に一度、夫とお金について話すミーティングを始めたんです。だいぶ前から提案していたんですけれど、何度か延期されて、先日やっと2回目のマネー会議を開いたばかりです。

爆笑の渦に包まれる瞬間が多々あるインタビューに

吉村

マネー会議、いいですね。変わっていきそうな気配はありますか?

あみさん

今までは節約を提案する場面では、「そんなケチケチしたこと言うな」みたいなことを言ってく
ることもあったのですが、最近は「夜ごはんは焼き鳥を食べたいから、ブランチに行くのはやめ
よう」と私が言えば、我慢してくれるという謙虚さも出てきました。

吉村

いい兆候ですね。

パートナーがお金の管理が苦手な場合は、一手に引き受けてあげるのもひとつ
だと思います。

あみさんが財産管理してあげるのがいいかもしれませんね。クリエイターの中に
は、採算を見たくないという方は結構いらっしゃいます。創作意欲が削がれますものね。そう
いった場合には、本人は仕事に打ち込みつつ、別の人がそこは手綱を持って管理するという形が
スムーズだと思います。
事業のほうは、クライアントさんごとに案件シートを作ってお金の出し入れをわかるようにする
ことをおすすめします。

持ち出しが多く、なんていうのも一目瞭然ですからね。

あみさん

なるほどー! 具体的でわかりやすいです。お金のことって規模が大きすぎて、悩みや心配事が
あっても、どこからメスを入れていいものか本当に迷います。でも、そうやって一つずつ解決方法を考えていけばいいんですね。

吉村

そうです、一歩一歩ね。いい方に向かってるんじゃないかと信じて。投資信託も順調に増えるこ
とを信じて。そうしたら、少しずつ心配が減ると思います。

あみさん

ありがとうございます。夫の愚痴が続いてしまいましたが、私自身もお金に対する目標値は全然高くありません。

吉村

いいと思います。だからハッピーでいられるんですよ。

『おやすみなさいおつきさま』の物語に出てくるお部屋。あみさんの手にかかれば、絵本の世界に住むことだってできる

今を楽しみ、未来を楽しむためのあたらしいお金の使い方

吉村

あみさんにとって、お金とはどんなものですか?

あみさん

欲しいものと交換するためのものではありますが、ものが欲しいわけではない。物欲もあるけれ
ど、そこが一番じゃない。

私にとって、お金の一番の使い道は、旅ですね。一年に一度は長期で
旅をしたい性分なので、そのために必要なものだと思っています。ラグジュアリーなホテルには一切興味がなく、土地の人が営むお宿で暮らすように旅をするのが好きです。だから、たくさんはいらないけれど。

吉村

あみさんにとってお金とは、旅するために必要なもの。素敵ですね。
ちなみに、生きていくうえで実際に必要な金額を出したことはありますか?一度、計算してみてもいいかもしれませんね。

自分にとって幸せな水準の生活って、いくらでできるのかって。長期的なライフプランの視点に立って人生の幸福を実現する「パーソナルファイナンス」はとても大切で、この先必要なお金が見えてくるとすごくスッキリするし、仕事や生活への意欲につながります。

FPさん、紹介しますよ!

あみさん

夢見るのは大得意だけど、具体的な数字は大苦手(笑)!

吉村

……(笑)!

お話を伺っていて、やはりお金をどう考えるかということには、人生の価値観が表れますね。

あみさん

人生の価値観。確かにそうですね。暮らすように旅するのが好きって言いましたけれど、ホームステイとか、民族ステイがしたいです。土地の人の生活が知りたいんです。

コロナ禍では、近所の河原で取ってきた野草を使って料理をしたり、蔦を取ってきてカゴを作っ
たりもしたんですけれど、それって、私がおばあさんになってやりたかった暮らしそのものだったんです。

そういうプリミティブな生き方をしている人が世界中にはたくさんいて、その暮らしをの
ぞいてみたい!旅をしたい理由は、そこですね。

吉村

未来のやりたいことのためにリサーチしているんですね! そして、そのリサーチにお金を使いたいんですね。あみさんが旅にお金を使うのは今を楽しむためだけではなくて、実は、その先の未来をも見据えた使い方だったとは!

あみさん

それです!よくわかりましたね。

言葉にしてもらえて、スッキリしました。

さらに、未来のリサーチを続けていくためには、もう少しお金を稼がないとなっていう気づきも出てきました。夫のことも、お金が絡むとケンカになりがちですが、“うまく一緒にやろうね!”ってスタンスと、幼稚園の先生級のやさしさで接することをもう少し心がけてあげなきゃなって、身が引き締まる思いです(笑)

今日はたくさん肩を押してもらって最高でした。ありがとうございました!

吉村

あみさんにとって、旅という今を楽しむお金の使い方は、理想の未来を実現するためのリサーチ
でもあったという展開が印象的でした。

ご夫婦のマネー会議も、嫌なお金の話っていうのではなくて、この先幸せにお金を使っていくために大切なことをふたりで考える時間であると捉えると、もっと気がラクになったり、楽しくなったりするかもしれませんね。
あみさん、今日はありがとうございました。

あみさんが講師を務める、アートクラスでの様子